歯科技工士数と歯科技工所数の推移:その驚きの結果とは!

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歯科技工士数の推移

(厚生労働省「衛生行政報告例」から)

 

歯科技工所数の推移

(厚生労働省「衛生行政報告例」から)

 

歯科技工士の減少から見えること

上記の歯科技工士数と歯科技工所数のデータは厚生労働省「衛生行政報告例」からだ。2004年~2014年までの10年間で1,173人の歯科技工士が減少していることがわかる。

何故だろうか?

■歯科技工士国家試験の合格者数の推移

2016年度の歯科技工士国家試験の合格者は987人で、この10年間に新たに歯科技工士養成学校へ入学・卒業する新たな歯科技工士は減少し続けている。

それでも2002年~2016年までの14年間で23,000人以上は間違いなく新たに歯科技工士として誕生しているはずだ。

しかし、歯科技工士数は減少し続けている最大の理由は、若い歯科技工士の離職率が異常に高いことにある。

■離職率80%が最も大きな要因

現在、歯科技工士の就労環境は、超長時間労働・低賃金といった劣悪な環境にあり、現代の奴隷制度やブラック産業と言われている。

そのことで卒後5年以内の離職率は約80%となっている。これは、離職率が非常に高い教育・介護職(40%程度)と比べても異常な状況であることが分かる。

歯科技工士養成学校への入学者数の減少が問題視されている。また学校の廃校も問題視されている。

しかし技工士の減少はそんなことが原因ではない。どう考えても原因はこの離職率の高さだ。離職率が歯科医師並みになれば何の問題もない。

長年、これだけの若い歯科技工士を犠牲にしてきたということだ。他にこれほどまでに若者を犠牲にしている産業が他にあるだろうか?

■歯科技工士の高齢化や途中リタイアも原因

歯科技工士全体の年齢構成は50歳以上が約半分を占める。アンバランスな年齢構成と高齢化も歯科技工士数の減少の原因であろう。

約80%が離職すると考えても毎年1000人程度は歯科技工士が誕生しているにもかかわらず、近年、歯科技工士数の減少が加速化していることは現役歯科技工士の離職・リタイアも大きな原因であろう。

ただ、年齢構成や高齢化による歯科技工士数の減少に関しては、対策や予測は十分可能だ。そして、若い歯科技工士の離職率が低くなれば技術・技能の継承の問題も解決できる。

それでも若い歯科技工士をボロボロになるまで酷使し続けることを改めない歯科業界全体に大きな問題があることは間違いない。

 

歯科技工所の増加から見えること

歯科技工士数が減少する一方で歯科技工所数は19233軒から20166軒へと増加している。

ここで注目すべきポイントは、2004年の歯科技工所の就労人数は平均1.85人であったのに対し、2014年は1.22人であった。

平均1.22人ということは、ほとんどの技工所が一人ラボということとなる。開業は良いことだが、この多くの開業した歯科技工士たちは果たして前向きな開業であったのだろうか?

■希望をもった開業なのだろうか?

歯科技工所数の増加に関しては、歯科技工士たちが夢と希望に満ちて開業したわけではないと私は感じる。

おそらく多くの歯科技工士が就労先の労働環境に限界を感じ、開業という選択肢しか残されなかったか、「雇われよりは、まだマシかも」と考えて開業に至ったように感じてならない。

ただ、どのような状況下で開業したとしても歯科技工所数は増加しており、一人ラボが増加しているということから、一人ラボや個人事業への対策を強化していく必要があるということだ。

若い歯科技工士たちが、将来に夢と希望をもてる歯科業界になる日は来るだろうか。

■歯科医療の質と安全性、患者に不利益ではない

この若い歯科技工士の離職問題は、歯科医療を受ける患者さんにとっての不利益が問題とされている。当然、歯科技工物の質と安全性の確保と、供給の問題としてだ。

このような問題提起は間違いなく正しい意見で、最も重要な問題として考えなければならない。

しかし、倫理観などどうでもよい私個人の意見として言いたい。

「じゃあ、言ってるお前らが社会貢献として歯科技工をやったらええやん」

歯科技工士養成学校へ「歯科技工を通じて社会に貢献したい」との思いから純粋に入学してくる若者には、全く歯科技工士の現状は伝えないばかりか、この問題の当事者である現役の歯科医療関係者のほとんどは歯科技工士の状況を改善しようと行動など起こしていない。

■歯科技工士専門学校への入学は注意が必要

歯科技工士養成学校の学費は非常に高額だ。奨学金を受け卒後すぐに多額債務者となる新歯科技工士も多い。養成学校には補助金も交付されている。

学費だけはちゃっかりむしり取りながら、卒後はブラック産業に放り込む現状は国家ぐるみの詐欺と言って良い。

歯科技工士の減少問題を、養成学校の定員割れや入学者数・卒業者数などの問題としてはいけない。若い歯科技工士の異常に高い離職率と、歯科技工士のブラックな労働環境と、問題解決のための対策が何もなされていないことが問題なのだから。

 

 

 

 

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