歯医者が開業資金の借入で失敗する理由!成功する3つの知識

 

あなたが歯医者で開業を考えているのであれば、まず頭を悩ますのが開業資金ではないだろうか?

そして、あなたはコンサルタントや税理士、会計士などに資金面の相談をしてはいないだろうか?

もし、そうだとしたら、彼らが言う教科書情報を鵜呑みにして、すべてお任せ状態の典型的なカモ歯医者のパターンとなっている可能性が高い。

ここでは、コンサルタントなどが教える「しょーもない教科書情報」は伝えない。私たちが今まで様々な事業を立上げ、運営することで得た実戦的で生きた知識を提供する。ここで基本の知識を得て、その専門家が本当に専門家であるか見極めていただきたい。

また、本記事では開業資金だけでなく、すでに歯科医院を経営している歯科医にとっての資金繰りに対しても非常に有効な内容となっている。

 

この記事のポイント

1、自己資金でなく融資が有利な理由

2、融資制度の種類と特徴

3、経営知識が乏しいことは罪。

 

 

問題

Q.はじめに基本中の基本の質問をする。

開業資金や運転資金は、なるべく多くを借入金で調達した方がよいが、それは何故か?自己資金が有るか無いかは関係ない。その理由は?

さすがに簡単すぎてほとんどの人がわかったと思う。もし、この質問に答えられなければ、開業は一旦保留とし、経営の基礎知識をつけなければならない。

では、問題の答えは、

 

答え

A.答えは簡単だ。

  • レバレッジを利かすことが出来る
  • 非課税
  • 負債となる

では、簡単に説明する。

 

1、レバレッジを利かすことが出来る

レバレッジとは、金融用語では「てこの原理」という意味で、小さな資金で大きな利益を得ることをいう。

例えば、あなたが歯科医院の開業に1億円を投じたとする。そして2つのパターンを想像してほしい。

①自己資金5000万円、借入金5000万円で開業

②自己資金を1000万円、借入金9000万円で開業

この場合、同じ利益率であれば、自己資金1000万円で開業した方が、自己資金の回収に係る期間は何倍も早い。回収後は金利分を除きすべてが儲けとなるため、成長のスピードも自己資金5000万円に比べ格段に早くなる。

不動産投資で考えると分かりやすい。同じく自己資金1000万円と5000万円で比べよう。

1億円の不動産に投資し、家賃収入で自己資金を回収するのは1000万円の方が圧倒的に早い。5000万円を回収するのに何年もかかっている間に、1000万円を回収し、家賃収入によって新たに1000万円が溜まる。そして、この1000万円を元に新たに9000万円を借り入れて1億円の不動産をもう1棟購入する。

この時点で、自己資金1000万円の方は1億円の不動産を2棟得たことになる。これをレバレッジ効果という。レバレッジ効果が大きいほど儲けや成長スピードは速くなる。

 

2、非課税

上記を例に自己資金を1000万円と5000万円で考えてみよう。実際には自己資金5000万円を用意するのは無理な話で、1000万円でも厳しいと思う。あくまで例えということで。

1000万円と5000万円では差額は4000万円にもなる。4000万円を貯めようと思ったら、かなりの高給取りで、とてつもなく働き、とてつもなく節約し、とてつもない額の税金を納めてきたということになる。

一方、借入金の場合は、金融機関の預金者の預金4000万円を活用するので、借入側は将来の金利負担以外には何の負担もないということになる。当然、借入は負債であるため非課税だ。

 

3、負債となる

借入金は負債だ。なので当然、負債には税金がかからない。一方、自己資金を投じてしまえば、後は儲けだ。利益には税金がかかる。

そもそも自己資金を貯めるのに多額の税金を払っている。自己資金を貯めるのに対し、金融機関からの借入は圧倒的に負担が軽くスピード感があるのだ。

 

問題のまとめ

事業経営を行ったことが無い人はどうしても借入が怖くて、なるべく少なくしがちだ。また、なるべく早く完済しようとする。しかし、実は金融機関や借入金とどのように付き合い、利用するのかが重要なのだ。

住宅ローンなどの完全負債と事業負債は全く違うものだ。利益を生み出すための負債の意味をしっかり理解しよう。

 

 

歯科医院経営の資金調達はどこから?

思ったよりも問題の解答の説明が長くなってしまったため、同じ負債総額であっても借入方法と返済方法を変えるだけで、月の返済額が半額になる方法などもお伝えしたかったが、別記事でお伝えすることとする。

この記事では、資金の調達先と、各金融機関の特徴などを説明する。

先ほどの1000万円の例えの場合は、自己資金負担率が10%であった。でも実際には「自己資金10%で借入できる訳がない」。そう思っていないだろうか?

結論から言うと全く問題なく借入可能だ。実際に私たちは新規開業のほとんどを自己資金負担10%で融資を受ける。

コンサルタントなどが「自己資金はなるべく多く用意してくれ」というのは、自己資金が多ければ誰でも融資は実行されるからだ。そんな当たり前のことを堂々と専門家面して主張しているのが不思議で仕方がない。

自己資金10%未満は厳しい(制度融資という融資制度の中には、自己負担0%で可能な公的融資もある)が、10%程度は全く問題なく可能だ。

例え1回や2回金融機関に断られても交渉し、実行まで持っていくことが真の実力だ。そのコンサルタントたちは金融機関との交渉に同行して成果を上げることができるだろうか?

では、本題に入って行こう。

 

開業資金や運転資金の種類と選択

融資や借入というと、単純に「銀行に行って借りれば良い」と考え、最初からプロパー融資(銀行直接融資)での融資実行を目指す開業医も多い。

それでも実行できれば良いと言えばいいが、今後の資金繰り計画などを考えると賢い方法とは到底言えない。

借入方法や融資の種類などは多く存在するので、ここでは以下の3つに絞って説明する。

 

①日本政策金融公庫

②制度融資(保証協会付融資)

③プロパー融資(銀行直接融資)

それぞれに特徴があり、状況に適した種類の融資を活用することで歯科医院を円滑に経営することが可能となる。

 

 

開業資金は日本政策金融公庫

まだ、信用がない開業時に民間金融機関から好条件で融資を受けることは不可能に近い。そこで公的創業融資である日本政策金融公庫の新創業融資を活用するべきだ。

そこで、開業時に日本政策金融公庫の新創業融資を活用する理由を示す。

  1. 最近の傾向として、政府として起業を積極的に促し、開業融資を積極的に実行している。
  2. 自己資金要件が10分の1以上に緩和されたうえ、設備・運転資金で最大2年の据置期間がある。
  3. 3000万円まで無担保・無保証で融資が可能。

大きな特徴は、自己資金要件が3分の1から10分の1に大幅に緩和され、据置期間も最大2年に拡充されたことだ。

要するに、1000万円に事業であれば自己資金100万円で900万円の融資を受けることができ、返済は2年後からスタートということになる。

政府が融資に積極的に取り組んでいることもあり、無担保・無保証なのでリスクは無いと言ってもよい状況だ。開業時には積極的に活用するべきと考える。

融資実行のポイント

とは言え、融資を断られることもある。そこで、日本政策金融公庫がどこを見て融資判断を行っているかを、私の経験も含めお伝えする。

■通帳のここを見る

融資を受けるためには面接があり、通帳の中身を確認される。

これは預金が多いか少ないかを見ているわけではない。見るポイントは日本政策金融公庫が公的な機関であるという特徴が出る。そのことから、

公共料金や税金の支払い

電気・ガス・水道といった公共料金が遅れずに引き落としされているか。税金(勤務であれば固定資産税など)の支払いが遅れていないかを見る。

これは、お金にルーズかどうかを見ているのと、公的機関が融資するということに理由がある。公共料金が遅れたりしそうな方は、引き落としでなく、コンビニ払いなどにしておくと多少遅れても言い訳できる。

■自己資金

10分の1の自己資金だが、単純にあるか無いかを見ているのではない。自己資金100万円で900万円の融資を受けるのに、預金が1000万円あれば通常は安心して融資が実行されると思いがちだが、決してそういうことではない。

その自己資金ができるまでの経緯を見ている。なので、裕福なバカボンが「親が援助してくれた資金です」などといっても、それはあなたが管理していたものではないので意味がない。

これから事業を継続していくための資金管理能力を見ている。

■最も重要なのは事業計画書

ここまでで分かるように自己資金要件が10/1となった今では、融資可能かどうかの判断はその事業内容次第ということになる。正確には今から開業なので事業計画次第ということだ。

そして、その事業計画を伝えるすべは事業計画書のみだ。したがって事業計画書を見て、この事業の

  • 将来性はどうか?
  • 客観的に正確に分析できているか?
  • 実現性は高いか?

などが総合的に判断され、融資が実行されるかが決まる。当然、金融機関は、返済が焦げ付かないかは最低限の判断基準となる。

事業計画書には書き方がある。私たちは融資や補助金の獲得などにおいて事業計画書では今のところ100%の採択率だ。

事業計画書の作成はこちらを参考にしていただきたい👉歯医者も補助金・助成金・融資で必須!事業計画書の作成方法

■断られても交渉

満額融資が断られることも多い。ほとんどの人はここで諦めるが、「融資は断られてからが本番」というくらいに考えていた方がよい。

一発で融資が実行されるよりも、交渉で融資が実行されることの方が、私たちは多い。一度断られたくらいで凹むハートの弱さでは話にならない。

また、最近では事業計画書が融資実行の重要な判断材料となっている。ここでいう事業計画書とは、日本政策金融公庫から求められるレベルの計画書ではない。一般企業の事業コンペやエンジェル(ベンチャーキャピタル投資家)、補助金の獲得などで作成するレベルの事業計画書のことだ。事業計画書については、また別記事で説明する。

✅👉日本政策金融公庫

 

 

事業での資金調達は制度融資

制度融資とは、市町村などの自治体が、個人や中小企業をサポートする目的の融資制度だ。

各自治体にある信用保証協会が個人や中小企業の保証をすることで、金融機関からのからの融資がスムーズに行われる。そのため、保証協会付融資とも呼ばれる。

制度融資でも開業資金の調達は可能だが、事業の途中での使い勝手の方が良い。(※ただし最近は自己資金ゼロでの開業融資を行っている自治体もあるので要チェック。)

制度融資も日本政策金融公庫と同じく公的融資のため、スムーズに融資が実行されることと金利が低いことが特徴だ。

市と県での違い

制度融資でポイントとなるのが、市と県によって制度融資の内容が違う場合がある。例えば、市の制度融資は保証料がかかるが、県は保証料が無料などだ。どちらを選択するのかによって違いが生じる場合があるので、あらかじめ確認する必要がある。

市県民税

次に、保証協会と金融機関がどこを見るかと言えば、売り上げを中心的にみている。何故だかよくわからないが利益率や営業利益ではなく売上を見る。

後は市県民税の税額によって融資枠を決める傾向がある。そのため、多額の資金が必要な状況など、場合によっては修正申告なども考える必要がある。

融資条件

制度融資も日本政策金融公庫と同じく、ほとんどの場合が無担保・無保証・低金利で借りることができる。

また、制度融資と連動して様々な公的融資のパッケージが出される。そのような新たな制度を常にチェックしておくことで、他者よりも返済条件や借換条件などが好条件となる状況が生まれる。

また、ここでも日本政策金融公庫と同じく事業計画書を作成することでスムーズな融資実行に繋がる。「あーだこーだ」口頭で説明されても担当者以外は理解できないうえ、事業が持続的に発展する根拠がない。論理的で経営知識があることが感じられる事業計画書で示す以外に、具体的な事業計画を伝える方法は無い。そのため、事業計画書がスムーズな融資実行に繋がるということだ。

✅👉全国信用保証協会連合会

 

 

プロパー融資(銀行直接融資)

驚くのが歯科医院経営において、プロパー融資によって資金調達をしている歯科医師が多いことだ。

あなたが10億円を超える売上であればプロパー融資が有効的な方法となる。しかし、売上が10億円以下であればプロパー融資が好条件である場合はほとんどない。したがって歯医者経営でプロパー融資を積極的に活用するメリットはほとんどないと言える。

プロパー融資でなくてもよい

制度融資の時に言い忘れていたが、保証協会付融資で融資を受けるのは信用金庫にするべきだ。

信用金庫は営業エリアが決まっている。あなたの地域に根差し営業していることから、地域密着で貸主と借主は一進一退の関係だ。なので、あなたの歯科医院の経営が順調でないと信用金庫も困るという構図だ。

なので、地銀はまだしもメガバンクから融資を受ける意味などないと思った方がよい。メガバンクがあなたの歯科医院の経営にそこまで親身になる必要があるのかを考えると分かるだろう。

そこで、プロパー融資でなくても良い理由は、あなたの地域が余程の郡部ではない限り、数件の信金があると思う。1つの金融機関だけでなく、複数の信用金庫から借入ることで解決できる。

また、複数の信用金庫から借入れるには、とても大きなメリットがある。私も信用金庫から最大8本の借入があったが、それにはとてつもなく大きなメリットがあるからだ。テクニック次第で月の返済額を半額にすることもできる。この方法は別記事で詳しく説明する。

 

 

まとめ

誰でも最初は経営知識や経験などない。融資制度の種類や、資金調達方法、金融機関と特徴など知らない。しかし、一般的な事業の起業と言えば開業資金200~300万円規模の個人事業から始まる。飲食店の危ない開業でも、始めはせいぜい1000万~1500万円程度だ。

そして、その間に小さな失敗を繰り返しながら経験を積み、事業規模の拡大・多角化へと成長していく。

例えるなら、自転車に乗れるようになるようなものだ。特殊な才能の持ち主でない限り、一度もコケることなく自転車に乗ることはできない。

事業経営も自転車の練習と同じだ。小さな失敗を繰り返し軌道修正し続けることが重要で、死に至る程の大事故を起こせば終わりだ。自転車も事業も変に慣れてきた頃に即死することが多い。普通は練習時期に即死する程の事故にはならない。

歯科医院の開業とは

一方、歯科医院の開業は数千万円かかると言われている。これは失敗すると即死のレベルだ。だが、即死する歯科医院はほとんどない。なぜなら、歯科の保険点数がいくら低いとはいえ、保険制度などで守られているからだ。

また、キャッシュインの仕組みが零細企業規模にもかかわらず、値下げ要求・競争に巻き込まれることがなく、優先的地位によって先取特権を得ることができていることにある。

しかし、決して豊かとはいえない。その理由は開業時をはじめとして「お金関する知識が乏しい」ため、資金繰りで失敗していることが大きな理由のひとつだ。資金繰りの改善で経営状況は劇的に良くなる。

経営知識が乏しいことは罪

今回は融資の種類や特徴をお伝えしたが、返済に関しては知識を得ることで、返済方法で利益を最大化することができる。

同じ借入金額の歯科医院が2軒あるとして、月々の返済額が半額であれば、半額の歯科医院の経営が豊かであることは誰でもわかる。そのような状況を生み出すことは何も難しいことではない。詳しくは、こちらを参考に。

私たちは、歯医者であっても経営者の能力と意識を身に着けてほしいので、記事を書いて伝えている。あなたの歯科医院の経営力アップであなたの収入を増やすことは簡単だ。

しかし、そんなことよりも経営力アップで手に入れた利潤を、歯科医師以上に困っている衛生士さんや技工士さんに還元してあげてほしい。そうすることであなたへの信頼と評価は絶大なものとなる。良いと感じたものは人に伝えるし、歯科医院の結束力は他医院ではまねができない最高のチームを創り出すことへとつながる。

 

 

 

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