最近、本格的に歯科矯正の治療に使用されるようになり、広がりを見せている「マウスピース矯正」をご存知でしょうか?
マウスピースと言えば、ボクシングやラグビーなどのコンタクトスポーツで使われているのを見たことがある人も多いのではないでしょうか?
この様なマウスピースを用いて歯科矯正の治療を行うのが「マウスピース矯正」です。この「マウスピース矯正」の人気の理由や特徴をお伝えしたいと思います。
マウスピースは歯科治療で使われてきた
歯科ではマウスピースが、マウスガード(ナイトガード)、スプリントやバイトプレート、アライナーなどと呼ばれ、これまでも歯科治療に用いられてきました。
■マウスガード
スポーツマウスガード、歯ぎしり防止(ナイトガード)など
■スプリントやバイトプレーナー
顎関節症の治療
■アライナー
一般の矯正に用いられるマウスピース
この様な治療での使用に加えて、歯科矯正の治療分野でもマウスピースが用いられることとなり広がりを見せています。
マウスピースを用いた歯科矯正の治療が可能となった理由は、デジタル機器の技術革新とマウスピース材料の進化にあります。
そのことは本記事の後半に述べるとして、先ずは「マウスピース矯正」の人気の理由と特徴をお伝えします。
マウスピースが透明なので目立たない
歯科矯正の治療で使用されるマウスピースは透明で薄いプラスチックでできたマウスピースを使用します。
マウスピース矯正は、金属のブラケットやワイヤーで覆う矯正装置と同じく、日中も装着します。しかし、透明のマウスピースで薄く作られていることから、装着しても目立ちません。
やはり金属で歯の表面が覆われるタイプの矯正装置は、審美面から言うとお世辞にもオシャレとは言えません。そのことからも、目立たない矯正装置であるマウスピース矯正は審美的に非常に魅力があると言えます。
見えない矯正装置というと、歯の裏側に矯正装置を装着する裏側矯正と同じ特徴があると言えます。
「マウスピース矯正」で治療できる範囲
「マウスピース矯正」の治療は日々進化しています。そのことで様々な症状に対応できるようになってきました。
しかし、かみ合わせが深く関わっている歯並びの矯正などは、マウスピースでは治療の難しいものもまだまだあります。
そのことを考慮せずに無理にマウスピースで治療をしようとすると、様々なトラブルの元になりかねません。
■マウスピース矯正に適した症状
マウスピース矯正が適しているのは、軽度な「叢生」の治療です。「叢生」とは、歯が上下でなく、前後にデコボコになっている歯並びのことを言います。
この様な治療には抜歯が伴う場合もあります。以前は抜歯が伴う治療にはマウスピース矯正は行えませんでしたが、最近では行えるケースも多くなっています。
■マウスピース矯正に適さない症状
マウスピース矯正は歯を大きく移動させることはできません。そのため、大きく歯を動かすことが必要となるマウスピース矯正に適さない治療は、
です。
「過蓋咬合」の治療
「過蓋咬合」とは、上の前歯が下の前歯に覆いかぶされように前に突出している歯並びのことを言います。
「噛み合わせ」の治療
かみ合わせが深く関わっている「噛み合わせ」の治療は、歯を大きく移動させる必要があるため、マウスピース矯正には不向きと言えます。
マウスピース矯正の治療の流れ
透明のマウスピースを装着して歯科矯正をおこなう「マウスピース矯正」。ここまでの説明であれば良いことばかりのように感じられるが、実はそうでもありません。
「マウスピース矯正」の治療の流れは、
①カウンセリング
まず、はじめにカウンセリングを行ないます。カウンセリングは、無料で行っている歯科医院も多くあります。
患者さん側としては、カウンセリングで歯科医の考えや治療方針、治療費などを把握し、退院と比較することも可能となります。
歯科医側は、カウンセリングで歯並びを確認し、患者さまの希望やご事情を把握することができます。
②精密検査・診断
カウンセリングの次は精密検査・診断と進みます。精密検査や写真撮影や3DCTによるデータ所得、また、必要に応じて歯型取得などを行ないます。多くの歯科医院では精密検査には検査費用が必要となります。
③治療計画の立案
精密検査・診断の結果によって得られたデータをもとに歯科医が治療計画を立案します。マウスピース矯正では、この治療計画の立案が非常に重要です。
最近は、精密検査にはデジタル医療機器の導入が広まっていることにより、計画をより正確に、より緻密に立てることが可能となっています。
④データをもとにマウスピースを作製
データをもとに歯科技工士などがパソコン上でデザインし、理想の歯並びの完成データを作成。その完成データをもとに、歯の移動過程をシュミレーションデータとして作成しマウスピースが完成します。
⑤マウスピースの装着・交換
理想の歯並びに歯を移動させるために、約10日から2週間で新しいマウスピースに交換して歯を動かします。
⑥治療が終了
1~2年で理想の歯並びを完成させます(個人差があります)。
マウスピース矯正の終了後も1、2年かけてリテーナー(保定装置)という装置を着ける必要があります。
リテーナーによって完成した理想の歯並びを安定させなければ、歯はもとに戻ろうとするため、数週間で治療前に戻ってしまいます。
「マウスピース矯正」は高度な技術が必要
マウスピース完成までの過程が非常に難しい歯科矯正の治療です。
マウスピースの交換は患者さまでも簡単にできますので、一見、簡単そうに見える「マウスピース矯正」ですが、非常に高度なデジタル技術と経験を要する治療なので、治療を考える際には慎重に歯科医院を選ぶ必要があります。
マウスピース矯正は豊富な経験と知識が必要
「マウスピース矯正」の多くは、歯科医院で取得した口腔内データを元に、歯の移動についてシミュレーションデータを作成します。ただし、このシミュレーションデータをそのまま使用しマウスピース製作に入るのではありません。
このデータを担当の歯科医師と歯科技工士が確認し、これまでの経験などを含めたデータでは表せない専門家としての判断が必要となります。
マウスピース矯正の治療期間
歯科矯正は1~3年と長期間の治療となります。そのため、歯科医にはその都度適切な判断が求められます。
その際にデジタルデータの分析能力だけでなく、歯科医にはかみ合わせ等の一般の矯正治療に欠かせない高度な技術と知識、多くの経験が必要となります。
「マウスピース矯正」はこれからさらに普及する
歯科矯正の治療においては、日本は欧米に比べかなり遅れています。裏側矯正は欧米では普及していますが、日本ではまだまだ扱う歯科が少ないです。
マウスピース矯正は、これまで世界90カ国以上、340万人を超える人たちがこの治療を受けています。
まだまだ出遅れている日本ですが、各専門メーカーも日々マウスピースの改良を行っています。そのため「マウスピース矯正」は日々進化しており、ますます普及していくことが考えられます。
先端医療機器でマウスピース矯正を可能に
「マウスピース矯正」を可能としたのは、最先端のデジタル医療機器の技術革新があります。
これまでは、レントゲンやCTで患者さんの歯並びを確認していましたが、この方法であれば2Dで、平面上の情報しか得られませんでした。
ところが、先端医療機器の3DCTを使えば、歯並びや口の中、顎が3Dの立体映像として得ることができます。
歯科矯正治療ではしっかりとした計画を立てることが最も重要です。このことはマウスピース矯正の治療でも同じです。
3Dデータなどの正確なデジタルデータは、より正確でより緻密な治療計画を立てるために非常に重要な役割を担っています。
マウスピース矯正はどの歯科医院を選べば良い?
これまでお伝えしたように、患者さん側から見ると一見簡単そうに見える「マウスピース矯正」ですが、最新のデジタル医療機器に対する知識と経験だけでなく、かみ合わせ等の一般の矯正治療に欠かせない技術と知識、経験が必要であることは歯科医院選びの最低条件とです。
更に必要な条件としては、
- 何でもかんでも無理に「マウスピース矯正」を強要しない。
- その人に適した治療方法を誠実に説明してくれる。
- 少しの疑問や不安にも真摯に答え対応してくれる。
矯正治療は基本的には保険が効かない高額な治療であるからこそ、「金儲け」を第一に考える歯科医も非常に多いです。
そのような中で、しっかりとした歯科医を選べるかどうかは天国と地獄ほどの差があると言っても過言ではありません。
大げさに聞こえる人いらっしゃるかとは思いますが、歯科医療の現場の内情を誰よりも良く知る者からすると心の中からそのように思います。
もし、身近に歯科医療従事者がいれば一度確認されることをお勧めします。
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