大阪府大阪市旭区の野上歯科医院が、実際には通院していない患者を受診したなどとして行っていない治療に対して診療報酬を不正に請求・受領したことで取消の行政処分を受けた。
不正内容は以下の通り
- 実際には行っていない保険診療を行ったものとして診療報酬を不正に請求してい た。(架空請求)
- 実際に行った保険診療に行っていない保険診療を付け増して診療報酬を不正に請求し ていた。(付増請求)
- 実際に行った保険診療を保険点数の高い別の診療に振り替えて診療報酬を不正に請 求していた。(振替請求)
保険医の登録の取消及び元保険医療機関の指定の取消相当(平成26年7月14日及び7月7日付)(PDF:214KB)
平成26年7月7日近畿厚生局
目次
野上歯科医院:野上 恭嗣→指導から監査・取消まで
保険医の登録の取消及び元保険医療機関の指定の取消相当について
平成 26 年6月 30 日に開催された近畿地方社会保険医療協議会において「保険医の登録の 取消」が妥当との答申及び「元保険医療機関の指定の取消相当」についての建議がありました。
これを受け、近畿厚生局長は次のとおり対応することを決定しましたので、お知らせしま す。
1.保険医の登録の取消及び元保険医療機関の指定の取消相当の取扱い
(1)登録の取消となる保険医
- 氏名: 野上 恭嗣(のがみ やすつぐ)〔67歳〕
- 取消年月日: 平成26年7月14日
(2)指定の取消相当となる元保険医療機関
- 名称: 野上歯科医院
- 所在地: 大阪府大阪市旭区高殿7-18-27
- 開設者: 野上 恭嗣
- 取消相当年月日: 平成 26 年7月7日
※ 当該保険医療機関は平成24年5月31日付で廃止していることから、指定の取消 相当の取扱いとしている。
2.監査を行うに至った経緯
- 平成 23 年7月7日、被保険者から健康保険組合を通じて近畿厚生局に対し、平成 22 年 8月に2回しか受診していないにもかかわらず、医療費通知では平成 22 年7月から平成 23 年2月まで毎月受診したことになっているとの情報提供があった。
- また、別の被保険者から、平成 23 年7月 28 日、大阪市及び大阪府を通じて、平成 23 年 10 月 26 日、守口市及び大阪府を通じて、それぞれ近畿厚生局に対し、上記(1)と同様の情報提供があった。
- 平成 24 年1月 26 日、個別指導を実施したところ、開設・管理者は、実際に診療していないにもかかわらず、誤って診療報酬を請求していたことを認めたものの、具体的にどの ように誤ったのか明確な回答がなかったため、個別指導を中断した。
- 平成 24 年6月 11 日、野上歯科医院から平成 24 年5月 31 日付で保険医療機関廃止届が 提出された。
- 平成 25 年2月7日から 15 日にかけて、患者調査を実施したところ、患者の回答と診療 報酬の請求内容が一致せず、不正請求が強く疑われたため、監査を実施した。
3.取消処分及び取消相当の主な理由
監査において判明した取消処分及び取消相当の理由となる主な事実は、以下のとおり。
- 実際には行っていない保険診療を行ったものとして診療報酬を不正に請求してい た。(架空請求)
- 実際に行った保険診療に行っていない保険診療を付け増して診療報酬を不正に請求し ていた。(付増請求)
- 実際に行った保険診療を保険点数の高い別の診療に振り替えて診療報酬を不正に請 求していた。(振替請求)
4.不正・不当金額
監査において判明した不正・不当金額は、監査で使用した平成 22 年7月分から平成 23 年 12 月分までのレセプトのうち以下のとおり。
- 不正金額: 14 名分 52 件 440,141 円
- 不当金額: 19 名分 170 件 1,179,466 円
なお、監査で判明した分以外についても、不正・不当請求のあったものについては、監査 の日から5年前まで遡り、保険者等へ返還させることとしている。
5.再登録等
原則として、登録の取消及び指定の取消相当の日から5年間は、保険医の再登録及び保険 医療機関の再指定は行わない。 (参考)取消処分の根拠条文
- 保険医の登録の取消 健康保険法第81条第1号及び第3号
- 保険医療機関の指定の取消 健康保険法第80条第1号、第2号、第3号及び第6号
歯科の指導・監査から生活・家族・関係者を守る
多かれ少なかれ指導・監査に不安を抱いている歯科医師は多い。
しかし、多くの歯科医師は相談できる相手がいないため、診療で忙しい日々に独自に一人で対応する場合が多い。
そのため、辻褄を合わすために技工所に指示書や納品書の改ざんを指示したりする場合も多いが、この場合は「取消」で済む話ではなく「詐欺」として刑事事件に発展する。
指導・監査は任意調査であるのに対し、事件となれば調査は強制なので当然、厳しいものになる。
「正しい対応」と「相談相手」
個別指導でしっかりと対応しなけば、述べ複数回にもなる監査に繋がる。
個別指導から監査へと移行する場合は、今回のようなに明らかな不正がある場合だけではない。意図しないミスや「言いがかり」ともいえる理由でも実施される。
また、何よりも個別指導や監査での技官は非常に高圧的で、結果が見えない中で長期間・複数回の監査が続く状況は、計り知れないほどの精神的負担を伴う。事実、そのことで自殺にまで追い込まれた医師も存在するのだから。
指導・監査は不正請求の疑いを抱かれているためだ。そのような歯科医師に対して世間の見る目は冷ややかだ。このような状況にある歯科医師へのテクニカル的なアドバイスや、何よりも相談できる相手がいると居ないのとでは、日々の不安や精神ストレス、指導・監査の結果は全く違ったものとなる。
指導・監査の対策マニュアル
是非、私たちが提供する保険医療機関の指導・監査の対策マニュアルをご活用いただき、保険医の指定は勿論、生活・家族・関係者の事業と生活を守っていただきたい。
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