大阪府大阪市の狭川歯科医院が、保険医療機関指定取消処分の取消等を求めて「取消訴訟」
と執行停止の申立てがされた。
そのことで取消処分は、取消訴訟の第1審判決言渡し後60日が経過する日までは行わないこととなった。
取消処分に至った不正内容は以下の通り
- 実際に行った保険診療に行っていない保険診療を付け増して、診療報酬を不正に 請求していた。(付増請求)
- 実際に行った保険診療を保険点数の高い別の診療に振り替えて、診療報酬を不正 に請求していた。(振替請求)
- 自費診療として患者から費用を徴収しているにもかかわらず、同診療を保険診療 したかのように装い、診療報酬を不正に請求していた。(二重請求)
- 実際に行った保険適用外である診療を保険適用である診療を行ったものとして、 診療報酬を不正に請求していた。(その他の請求)
保険医療機関の指定の取消及び保険医の登録の取消(平成27年4月2日付)(PDF:235KB)
平成27年5月11日 近畿厚生局
狭川歯科医院が取消訴訟
保険医療機関の指定の取消及び保険医の登録の取消の延期について
近畿厚生局長は、狭川歯科医院及び狹川正歯科医師に平成27年4月2日付けで保険医療機関の指定及び保険医の登録を取り消すとして、通知したところ、開設者であり保険医の狹川正氏から大阪地方裁判所に対して、保険医療機関指定取消処分の取消等を求めて訴訟(以下「取消訴訟」といいます。)が提起され、あわせて当該処分の効力の停止を求めて執行停止の申立てがされました。
このうち、執行停止の申立てに関しては、平成27年4月20日に、大阪地方裁判所において、取消訴訟の第1審判決言渡し後60日が経過する日まで取消処分の効力を停止する旨の決定がされました。
このため、当該保険医療機関の指定の取消し及び当該保険医の登録の取消しは、取消訴訟の第1審判決言渡し後60日が経過する日までは行わないことになりましたので、お知らせします。
狭川歯科医院が個別指導から監査9回を経て取消へ
平成27年3月26日 保険医療機関の指定の取消及び保険医の登録の取消について平成27年3月19日に開催された近畿地方社会保険医療協議会において、「保険医療機関の指定の取消及び保険医の登録の取消」が妥当との答申がありました。
これを受け、近畿厚生局長は次のとおり対応することを決定しましたので、お知らせしま す。
1 保険医療機関の指定の取消及び保険医の登録の取消
(1)指定の取消となる保険医療機関
- 名称: 狭川歯科医院
- 所在地: 大阪府大阪市中央区南船場四丁目2番4号 日本生命御堂筋ビル9階
- 開設者: 狹川 正(さがわ ただし)
- 取消年月日: 平成 27 年4月2日
(2)登録の取消となる保険医
- 氏名: 狹川 正(51歳)
- 取消年月日: 平成27年4月2日
2 監査を行うに至った経緯
- 平成23年3月24日、健康保険組合から東海北陸厚生局を通じて近畿厚生局指導監査課 に対し、診療報酬明細書の点検において、多数歯の歯肉剥離掻爬手術及び充填の診療報酬が請求されているため、被保険者に確認したところ、自費診療が保険診療として請求 されていること及び診療報酬明細書に基づく一部負担金が実際に支払った額より多いこ とが判明した旨、情報提供があった。
- また、平成23年12月28日、健康保険組合から健康保険組合連合会東京連合会を通じて 近畿厚生局指導監査課に対し、患者から医療費通知に記載された一部負担金が実際に支 払った額より多い旨の申出があったことから、患者に確認したところ、実際に行われていない口腔前庭拡張術及び充填の診療報酬が請求されていることなどが判明した旨、情報提供があった。
- 平成24年1月26日、個別指導を実施したところ、情報提供にかかる患者の領収証と医 療機関の領収証(控)の金額が相違していることについて、開設・管理者である狹川歯 科医師から明確な回答がなかったことから個別指導を中断した。
- 平成25年3月7日、個別指導を再開したところ、狹川歯科医師は、情報提供にかかる患者について、実際には保険適用外の冠及びインレーを装着し自費を徴収しているにも かかわらず、保険適用の冠及びインレーを装着したとして診療報酬を請求していたことを認めたことから、診療報酬を不正に請求していることが強く疑われたため、個別指導を中止し、平成25年10月10日ほか計9回の監査を実施した。
3 取消処分の主な理由
監査において判明した取消処分の理由となる主な事実は、以下のとおり。
- 実際に行った保険診療に行っていない保険診療を付け増して、診療報酬を不正に 請求していた。(付増請求)
- 実際に行った保険診療を保険点数の高い別の診療に振り替えて、診療報酬を不正 に請求していた。(振替請求)
- 自費診療として患者から費用を徴収しているにもかかわらず、同診療を保険診療 したかのように装い、診療報酬を不正に請求していた。(二重請求)
- 実際に行った保険適用外である診療を保険適用である診療を行ったものとして、 診療報酬を不正に請求していた。(その他の請求)
4 不正・不当金額
監査において判明した不正・不当金額は、監査で使用した平成22年1月分から平成25年 6月分までのレセプトのうち以下のとおり。
- 不正金額: 50名分 93件 2,956,811円
- 不当金額: 50名分 162件 297,180円
なお、監査において判明した分以外についても、不正・不当請求のあったものについて は、監査の日から5年前まで遡り、保険者等へ返還させることとしている。
5 再指定等
原則として、指定の取消及び登録の取消の日から5年間は、保険医療機関の再指定及び 保険医の再登録は行わない。 (参考)取消処分の根拠条文
- 保険医療機関の指定の取消 健康保険法第80条第1号、第2号、第3号及び第6号
- 保険医の登録の取消 健康保険法第81条第1号及び第3号
歯科の指導・監査から生活・家族・関係者を守る
多かれ少なかれ指導・監査に不安を抱いている歯科医師は多い。
しかし、多くの歯科医師は相談できる相手がいないため、診療で忙しい日々に独自に一人で対応する場合が多い。
そのため、辻褄を合わすために技工所に指示書や納品書の改ざんを指示したりする場合も多いが、この場合は「取消」で済む話ではなく「詐欺」として刑事事件に発展する。
指導・監査は任意調査であるのに対し、事件となれば調査は強制なので当然、厳しいものになる。
「正しい対応」と「相談相手」
個別指導でしっかりと対応しなけば、述べ複数回にもなる監査に繋がる。
個別指導から監査へと移行する場合は、今回のようなに明らかな不正がある場合だけではない。意図しないミスや「言いがかり」ともいえる理由でも実施される。
また、何よりも個別指導や監査での技官は非常に高圧的で、結果が見えない中で長期間・複数回の監査が続く状況は、計り知れないほどの精神的負担を伴う。事実、そのことで自殺にまで追い込まれた医師も存在するのだから。
指導・監査は不正請求の疑いを抱かれているためだ。そのような歯科医師に対して世間の見る目は冷ややかだ。このような状況にある歯科医師へのテクニカル的なアドバイスや、何よりも相談できる相手がいると居ないのとでは、日々の不安や精神ストレス、指導・監査の結果は全く違ったものとなる。
指導・監査の対策マニュアル
是非、私たちが提供する保険医療機関の指導・監査の対策マニュアルをご活用いただき、保険医の指定は勿論、生活・家族・関係者の事業と生活を守っていただきたい。
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