大阪府泉佐野市の医療法人八龍会なかみどり歯科は、著しい不正請求を繰り返し行っていたとして個別指導を中止し、計31日間の監査を実施したうえで保険医療機関の指定取消処分となった。
不正内容は以下の通り
- 実際には行っていない保険診療を行ったものとして診療報酬を不正に請求していた。 (架空請求)
- 実際に行った保険診療に行っていない保険診療を付け増して、診療報酬を不正に請求 していた。(付増請求)
- 実際に行った保険診療を保険点数の高い別の診療に振り替えて、診療報酬を不正に請 求していた。(振替請求)
- 実際には歯科訪問診療を行っていない時刻に歯科訪問診療を行ったものとして、診療 報酬を不正に請求していた。(その他の請求)
- 実際には診療録に記載がある歯科医師が出勤しておらず、歯科医師からの指示もなく 歯科衛生士が訪問しているにもかかわらず、当該歯科医師が歯科訪問診療を行ったもの として、診療報酬を不正に請求していた。(その他の請求)
- 実際には診療録に記載がある歯科医師は出勤しているが施設に訪問しておらず、歯科 医師からの指示もなく歯科衛生士が訪問しているにもかかわらず、当該歯科医師が歯科 訪問診療を行ったものとして、診療報酬を不正に請求していた。(その他の請求)
- 実際には診療録に記載がある歯科医師は、診療録に記載がある施設とは別の施設で歯 科訪問診療を行っているにもかかわらず、当該歯科医師が同日、同時刻に診療録に記載 がある施設に訪問し、歯科訪問診療を行ったものとして、診療報酬を不正に請求してい た。(その他の請求)
- 実際には診療録に記載がある歯科医師は当該保険医療機関に勤務しておらず、歯科医 師からの指示もなく歯科衛生士が訪問しているにもかかわらず、当該歯科医師が歯科訪 問診療を行ったものとして、診療報酬を不正に請求していた。(その他の請求)
元保険医療機関の指定の取消相当(平成29年11月27日付)(PDF:118KB)
平成29年11月27日 近畿厚生局
医療法人八龍会なかみどり歯科→個別指導・監査→取消処分
元保険医療機関の指定の取消相当について 平成29年11月20日に開催された近畿地方社会保険医療協議会において、「元保険医療機関の 指定の取消相当」についての建議がありました。
これを受け、近畿厚生局長は次のとおり対応しましたので、お知らせします。
1 元保険医療機関の指定の取消相当の取扱い
(1)指定の取消相当となる元保険医療機関
- 名称: 医療法人八龍会なかみどり歯科
- 所在地: 大阪府泉佐野市上瓦屋 350 番地の2
- 開設者: 医療法人八龍会
- 理事長: 田中 (法人番号 5120105006529)
- 取消相当年月日: 平成29年11月27日
※1 当該保険医療機関は平成28年7月31日付で廃止していることから、指定の取消相 当の取扱いとするものです。指定の取消相当の取扱いとは、指定の取消処分と同等 の取扱いをするものです。
※2 当該医療法人は平成29年2月21日付で大阪地方裁判所から破産手続開始の決定が なされています。
2 監査を行うに至った経緯
- 平成26年12月2日及び平成27年4月15日、匿名の者から近畿厚生局指導監査課に対し、①歯科医師等の名義を借りて診療報酬の水増し請求をしている、②当該保険医療機関か ら半径16㎞を超えた病院等の施設の入所者に歯科訪問診療を行っていること及び医療法人八龍会の事務所から出発し、同事務所に戻っているにもかかわらず、同法人の各分院 から歯科訪問診療を行ったものとして診療報酬を請求してる旨の情報提供があった。
- 平成27年10月22日及び同年11月19日、個別指導を実施したところ、技工指示書と納品 書の記載内容が相違していることについて、管理者は歯科技工物の付け増し及び歯科材 料を振り替えて診療報酬を不正に請求していたことを認めたものの、歯科訪問診療につ いては、①休暇で出勤していない歯科医師名が診療録に記載されている、②歯科医師の 出勤前の時間が歯科訪問診療の実施時刻として診療録に記載されている、③訪問歯科衛 生指導の担当者の指導時間が重複していることについて、明確な回答が得られなかった ことから、個別指導を中断した。
- 個別指導において持参のあった診療録及びタイムカード等を精査した結果、上記(2) における①及び②の事象が多数認められ、著しい不正請求が疑われたことから、平成28 年2月8日に個別指導を中止する旨を通知し、平成28年2月18日から同年12月15日まで 計31日間の監査を実施した。
3 指定の取消相当の主な理由
監査において判明した指定の取消相当の理由となる主な事実は、以下のとおり。
- 実際には行っていない保険診療を行ったものとして診療報酬を不正に請求していた。 (架空請求)
- 実際に行った保険診療に行っていない保険診療を付け増して、診療報酬を不正に請求 していた。(付増請求)
- 実際に行った保険診療を保険点数の高い別の診療に振り替えて、診療報酬を不正に請 求していた。(振替請求)
- 実際には歯科訪問診療を行っていない時刻に歯科訪問診療を行ったものとして、診療 報酬を不正に請求していた。(その他の請求)
- 実際には診療録に記載がある歯科医師が出勤しておらず、歯科医師からの指示もなく 歯科衛生士が訪問しているにもかかわらず、当該歯科医師が歯科訪問診療を行ったもの として、診療報酬を不正に請求していた。(その他の請求)
- 実際には診療録に記載がある歯科医師は出勤しているが施設に訪問しておらず、歯科 医師からの指示もなく歯科衛生士が訪問しているにもかかわらず、当該歯科医師が歯科 訪問診療を行ったものとして、診療報酬を不正に請求していた。(その他の請求)
- 実際には診療録に記載がある歯科医師は、診療録に記載がある施設とは別の施設で歯 科訪問診療を行っているにもかかわらず、当該歯科医師が同日、同時刻に診療録に記載 がある施設に訪問し、歯科訪問診療を行ったものとして、診療報酬を不正に請求してい た。(その他の請求)
- 実際には診療録に記載がある歯科医師は当該保険医療機関に勤務しておらず、歯科医 師からの指示もなく歯科衛生士が訪問しているにもかかわらず、当該歯科医師が歯科訪 問診療を行ったものとして、診療報酬を不正に請求していた。(その他の請求)
4 不正・不当請求金額
監査において判明した不正・不当請求金額は、監査で使用した平成24年1月分から平成 27年12月分までのレセプトのうち以下のとおり
- 不正請求金額 39名分 241件 3,495,796円
- 不当請求金額 38名分 456件 4,526,594円
5 再指定
原則として、指定の取消相当の日から5年間は、保険医療機関の再指定は行わない。
(参考)取消処分の根拠条文
○ 保険医療機関の指定の取消 健康保険法第80条第1号、第2号、第3号及び第6号
歯科の指導・監査から生活・家族・関係者を守る
多かれ少なかれ指導・監査に不安を抱いている歯科医師は多い。
しかし、多くの歯科医師は相談できる相手がいないため、診療で忙しい日々に独自に一人で対応する場合が多い。
そのため、辻褄を合わすために技工所に指示書や納品書の改ざんを指示したりする場合も多いが、この場合は「取消」で済む話ではなく「詐欺」として刑事事件に発展する。
指導・監査は任意調査であるのに対し、事件となれば調査は強制なので当然、厳しいものになる。
「正しい対応」と「相談相手」
個別指導でしっかりと対応しなけば、述べ複数回にもなる監査に繋がる。
個別指導から監査へと移行する場合は、今回のようなに明らかな不正がある場合だけではない。意図しないミスや「言いがかり」ともいえる理由でも実施される。
また、何よりも個別指導や監査での技官は非常に高圧的で、結果が見えない中で長期間・複数回の監査が続く状況は、計り知れないほどの精神的負担を伴う。事実、そのことで自殺にまで追い込まれた医師も存在するのだから。
指導・監査は不正請求の疑いを抱かれているためだ。そのような歯科医師に対して世間の見る目は冷ややかだ。このような状況にある歯科医師へのテクニカル的なアドバイスや、何よりも相談できる相手がいると居ないのとでは、日々の不安や精神ストレス、指導・監査の結果は全く違ったものとなる。
指導・監査の対策マニュアル
是非、私たちが提供する保険医療機関の指導・監査の対策マニュアルをご活用いただき、保険医の指定は勿論、生活・家族・関係者の事業と生活を守っていただきたい。
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